2022年からますます有利に 年金を「前倒し」でもらうべき理由

夫婦の年金繰り上げ受給3つのパターン
夫婦の年金繰り上げ受給3つのパターン

現在、年金の受給開始年齢は原則65才だが、実は「前倒し」して受け取れる制度がある。60~64才の間に受け取る「繰り上げ受給」というもので、逆に「先送り」して66~70才の間に受け取る「繰り下げ受給」も選択できる。

前者の「繰り上げ受給」は、早く受け取る代わりに受給額が減る。具体的には、1か月早めるごとに0.5%、1年で6%減額される。5年早めて60才から受け取るようにすると、受給額は30%減る。

一方「繰り下げ受給」は、1か月遅らせるごとに0.7%、1年で8.4%増えるので、70才から受け取ると42%増えることになる。

一見すると、後者の「繰り下げ受給」を選んで年金額を増やした方がお得に見えるし、政府もそれを推奨している。しかし実際には、「制度がコロコロ変わるから、いつ減らされるかわからない」という年金不信や、「そんなに長生きできない。死んだら丸損だ」と思う人も少なくないので、前倒しの「繰り上げ受給」を選ぶ人は、先送りする人の約20倍も多い。「年金博士」こと、ブレインコンサルティングオフィス代表の北村庄吾さんが話す。

「年金制度は複雑だし、手続きも煩雑なので、つい“国が奨めるように受け取ればいいや”と考える人も多いかもしれません。しかし、国が最優先しているのは、“年金をできるだけ国民に支払わないようにして、年金財政をラクにしよう”ということです。

大切なのは、国民一人ひとりが年金の正しい知識を学んで、それぞれの生活や人生プランに合った受け取り方をすること。そう考えると、多くの場合、『前倒し』で受け取った方が得するのです」

10年ごとに1割ずつカットされる

1月24日、厚労省は2020年度の公的年金の支給額を前年度比0.2%引き上げると発表した。しかし、物価は前年度より0.5%上がっている。つまり、「実質0.3%のマイナス」だ。

これは「マクロ経済スライド」という小難しい仕組みなのだが、簡単に言えば“年金自動カットシステム”である。実は、安倍政権になってからの7年間で年金は「実質マイナス6.4%」となっているのだ。

「今後10年間で、年金は1割ほどカットされるでしょう。この“自動カット”の仕組みは、この先、30年ほど続く見込みです」(北村さん、以下「」内同)

知れば知るほど、「どうせ減らされるなら、前倒しでもらっておこう」と思わされる年金制度。しかも、再来年4月から、繰り上げ受給がさらに得するように、制度が変更される予定だ。

「働きながら年金を受け取る『在職老齢年金制度』が見直されます。これまでは、年金+仕事の賃金が『月28万円』を超えると、超えた分の半額がカットされてきました。だから、前倒しで受け取ろうとしても、60~64才で仕事をしている人はやりにくかったんです。

しかし、2022年4月から、その上限額が『月47万円』まで引き上げられる見込みです。繰り上げ受給を選んでも、ほとんどの人が年金+賃金が47万円を超えないので、ますます前倒しが有利になります」

いつから、どれぐらい前倒しで受け取りたいか

さて、いざ実際に前倒しで受け取るなら、夫婦の働き方や人生設計に合った“賢い戦略”を立てる必要がある。

繰り上げ受給は、「1か月単位」で選べるので、たとえば「64才11か月から」受給することもできるし、「63才6か月から」でも「60才から」でも設定できる。

「仕事をリタイアする時期に合わせてもいいし、急病で倒れて働けなくなった時点で受け取り始めてもいい。“親の介護のための費用が必要になった”などの事情で、受給のタイミングを見計らってもいいでしょう」

さらに、夫婦世帯ならば、「夫の年金」と「妻の年金」に分けて考える必要もある。別掲の模式図を見ていただきたい。「40年間サラリーマンをした夫と専業主婦の妻」という標準的な世帯をモデルにして、【1】夫婦一緒に繰り上げ、【2】妻だけ繰り上げ、【3】夫だけ繰り上げ、の3つのパターンのイメージをまとめた(わかりやすくするために、繰り上げ受給の開始時期は「60才」に統一)。

「繰り上げ受給を選んだ場合、“年金の一部の金額だけ繰り上げる”ということはできません。年金は全額、前倒しで受け取ることになり、途中でやめることもできないので、慎重に検討してください。

“月々数万円の生活費や遊興費のプラスが欲しい”という場合は、パターン【2】の『妻だけ』、月10万円ほどのプラスが欲しければパターン3の『夫だけ』がいいでしょう」

このように、そもそも夫婦でいくら受け取れるのかをまず把握し、いつから、どれぐらい前倒しで受け取りたいかを検討し、細かく“オーダーメード”していけばいいということだ。

※女性セブン2020年3月5日号