


「課長」というと、部長と双肩してまさに「中間管理職」というイメージだが、給料はどのくらいもらっているのだろうか。これから課長になる人はもちろん、今現在課長である人も、「他はどれくらいもらっているのか」と気になるところだろう。
課長の手取りは平均で「約40万円」
厚生労働省のレポート「令和2年賃金構造基本調査」によると、日本の「課長」職の平均給与(所定内給与額)は49万2200円(平均年齢48.6歳、平均勤続年数20.3年、平均所定内実労働時間167時間、超過実労働時間平均3時間)。
手取りにすると月収約40万円。もちろんこれは平均なので、「もっともらっている」という人もいれば、「はるかに少ない」という人もいるのは間違いない。企業規模が違えば、同じ課長でも、マネジメントする人数も変わるだろう。なかには「肩書きだけは課長だが……」という単なるプレイヤーもいるはずだ。
とはいえ、昇格と昇給は大概比例するものであるし、平均が見えれば、自分が今、どの位置にいるかも自ずと見えてくる。「やはり給与が少ない業界だな」と感じれば、ジョブチェンジを考えるかもしれないし、給与の高さだけが「やりがい」ではないと改めて気づくかもしれない。
ただ、給与にせよ、仕事そのものにせよ、課長として部下をマネジメントする立場として「やりがい」は感じられなければ企業としては困る訳だが、そういった意味で「課長」職の平均手取りが月約40万円というのは、はたして適切な額面か。
課長職の「平均」だと老後はかなりやばい…
「課長」職の家計の事情についてみていこう。
まず家賃だが、手取りの25〜30%くらいの金額が理想とされている。40万円だと10万〜12万円だろうか。都内で1LDKならば十分に住める価格帯だ。これが2LDK以上となると、探せる部屋の数は一気に減る。「子どものために、もっと広い家を」となると、夫婦共働きでないと苦しいだろう。
残りの28万〜30万円で、光熱費1〜2万円、食費3〜4万円とすると残り22〜26万円が、スマホ代を含めた自由に使える金額となるが、その他生活費諸々を考えると、貯金額は月10万円弱、お小遣い月5万円あればいいといったところだろうか。
子どもがいるとすれば、これに教育費がかかってくる。親が認知症になれば介護費用もかかる。夫婦共働きの場合、教育費は折半できるが、介護費用は倍かかる可能性があることも見逃せない。
「老後2000万円問題」が叫ばれていたが、2000万円は「最低限過ごすための金額」であり、余裕を持った生活のためには3000万円程度必要とされている。人生のキャリアが「課長」職クラスの「平均」だと、単なる貯蓄ではまるで足りないことがわかる。
部長の手取りは平均で「約48万円」
それでは出世して「部長」になるとどうなるのか? 同調査によると、部長職の平均給与(所定内給与額)は59万4400円(平均年齢52.8歳、平均勤続年数21.9年、平均所定内実労働時間169時間、超過実労働時間平均2時間)であった。手取りにすると約48万円で、課長職より8万円ほど高い。
この上乗せされた分を、そのまま貯蓄にまわせるかどうかは、難しいという実情がある。課長から部長に昇進し、給与も額面では10万円以上増えたとき、同じ生活レベルで暮らし続けることができるか。
「もっと良いところへ住もう」「もっと良い服を着よう」「ちょっと贅沢したものを食べよう」「子どもの習いごとをひとつ増やそう」……昇給に伴い、こうした欲望が喚起される例はよくあることだ。とくに自身では自分の財務状況を理解していても、パートナーから提案され押し切られることも多いだろう。
しかし、状況を振り返れば、余剰金を貯蓄分にまわすことで「ようやく必要分に足りている」レベルであって、給与が少なかったマイナス分を取り返すには、さらに節約努力が必要であることさえあるわけだ。
日本に少なくない「親が金持ち」である層
なんとも悲惨な話だが、これはあくまで1人の世代で見たときの話であって、上記のようにカツカツに節約して出世して、ようやく安心レベル……といった悲惨な目にはあわないケースも少なくない。「親が金持ち」である人たちだ。
国税庁の調査「相続税の申告状況(平成30年度分)」によると、相続税の課税割合はおよそ8.5%だった。「税制改正によってお金持ちではない人にも相続税がかかるようになった」とは言われるが、相続税の基礎控除額は(3000万円+600×法定相続人の数)であることを考えると、相続税が課されるような人は、やはり富裕層である。
とはいえ、単純に「現金」で所有している人は少なく、相続財産は「土地」などの不動産であることも多い。このような「一見、いらない実家」なども「親が何も持っていない」人たちからみると大きな財産である。
例えば、実家を売って税金を払って手元に300万円しか残らなかったとしても、貯蓄にプラスするとすれば大きな額だ。「実家があるならば売らずに住めばよいのではないか」という話であれば、家賃分もしくは住宅購入分、数千万円以上のさらに大きな金額がプラスとなる。
課長にも部長にもなれない人たちは?
課長から部長に昇進して月8万円程度手取りが増えたところで、平均でみると定年まで約12年、1152万円多く収入がもらえるわけだが、どの程度を貯蓄や資産形成にまわせるか。生活レベルまで「部長らしく」してしまうと、支出も増えてしまうだろう。
親が金持ちではないかぎり、「生活に余裕」というものは、いつまでたってもあらわれない。では、すでに課長レベルも部長レベルも無理で、生活に余裕がない人たちはどうするのか。「無い袖は振れない」ので「いざとなったら、国がなんとかしてくれるだろう」と諦めも早めにつく。だが、その頼ろうとしている国さえも、もう振る袖なぞはなかったとしたら……。
超少子高齢化社会の日本、震災復興、オリンピック赤字と泣きっ面に蜂の経済大打撃は続くが、それをギリギリのところで支えるのは日本の中間管理職「課長」「部長」の奮闘もあるのだ。