年金額0・2%引き上げ 4月から。しかし、物価上昇反映 抑制策2年連続で目減り

厚生労働省は24日、2020年度の公的年金の受給額を19年度比で0.2%引き上げると発表した。厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯では月額22万724円と458円増える。2年連続のプラス改定となったが、給付額を抑制する「マクロ経済スライド」も初めて2年連続で発動する。賃金や物価の伸びより年金額の増加を抑えて、将来世代の給付に備える。

厚労省は夫が平均的な年収(賞与含む月額換算43万9千円)で40年間働き、その間妻が専業主婦だった場合をモデル世帯としている。共働き世帯が夫婦合わせて平均的年収を稼いだ場合も同じ金額がもらえる計算になる。

自営業者や学生が入る国民年金は満額で月額6万5141円と133円増える。国民年金を満額で受け取るためには40年間保険料を支払う必要がある。

年金額は物価や賃金の変動に応じて毎年改定される。同日発表された19年の消費者物価指数を受けて、厚労省が20年度の年金額を定めた。

受給額の計算に用いた賃金上昇率は0.3%だった。以前は賃金の変動に応じて年金額が決まる仕組みだったが、04年のマクロ経済スライドの導入で伸びが抑制されるようになり、20年度の増額率は0.2%にとどまった。

つまり、年金財政を圧迫しないよう物価や賃金の上昇幅より低く抑える仕組みが2年連続で実施され、年金の実質的な価値は目減りすることになる。

マクロ経済スライドは少子高齢化による年金の支え手の減少を給付額に反映する仕組み。現在の高齢者に年金の一部を我慢してもらい、その分を将来世代の給付に回す。

マクロ経済スライドは物価と賃金が低下するデフレ下では発動せず、04年の導入以来、発動したのは消費増税直後の15年度と19年度の2回にとどまっていた。このことで、高齢者に計画より多く年金を支払う状況が続き、将来世代の年金水準が低下する弊害を招いてきた。

厚労省は18年度からマクロ経済スライドを発動しない場合、調整分を翌年以降に繰り越す「キャリーオーバー制度」を導入。19年度は過去の繰り越し分をまとめて抑制する形になった。

マクロ経済スライドを2年連続で発動するのは制度導入以来初めて。だが、これまでの発動頻度が極端に少なかったため当初19年間で終了する予定だった調整期間は伸びている。厚労省は8月に公表した公的年金の長期見通し(財政検証)で、財政調整が完了するまでには今後少なくとも26~27回発動する必要があるとの見通しを示している。

▼マクロ経済スライド 日本の公的年金はその時の現役世代が高齢者に仕送りをする方式をとっており、高齢者の割合が増えると世代間のバランスがいびつになる。少子高齢化が進む中でも現役世代の保険料負担が過剰にならないよう、年金額の伸びを物価や賃金の伸びより抑える仕組みがマクロ経済スライドだ。
マクロ経済スライドが導入された2004年には、基礎年金の半分を税金でまかなうことや、会社員が入る厚生年金の保険料を18.3%(会社と折半負担)とすることなどが決まった。これによって年金財政の収入が固まったため、マクロ経済スライドで支出を抑制できなければ、将来世代に支払う年金がその分減ることとなった。