国税庁の調査によると、日本の1年を通じた給与所得者数は5,255万人、平均給与は436万円とのことだ(「令和元年分 民間給与実態統計調査」)。老後のために必要となる貯蓄額が2,000万円だの3,000万円だの言われているなか、この数字は果たして十分であるのか。
正規社員の平均給与は503万円だが…
国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者のなかで正規社員の平均給与は503万円、非正規社員の平均給与は175万円だった。正規は非正規の約2.87倍をもらっており、その差は328万円となる。
1年を通じて勤務した給与所得者数は、全体で5,255万人、その平均給与は436万円(男性540万円・女性296万円)となった。
「老後2000万円問題」が世間をにぎわせたことがあるが、厚生労働省の「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給者は3,530万人で、受給者平均年金は月額約14万6,000円(男性約16万5,000円・女性約10万3,000円)。年額にすると約175万円となり、給与所得の平均436万円(正規で言えば503万円)と比較すると、代替できるものではないことがわかる。
定年後、給与所得時と同様の支出であるならば、資産を切り崩していく必要があるわけだが、そもそも「年収436万円」で貯蓄はどれほどできるのであろうか。
年収436万円だと毎月の給与は約36万円、手取りは約28万円となる。そのうちの15%を貯蓄にまわしたとすると月4.2万円、1年では50.4万円貯まる。定年まで、およそ40年間働いたとすると……2,016万円貯まる計算だ。ちなみに、「老後2,000万円問題」の計算では、2,000万円というのは「生活できるレベル」の金額であり、「ゆとりある生活」には3,000万円以上は必要であったことは記憶に新しい。
収入の15%を貯蓄にまわすとなると、かなり節約したカツカツの生活が求められる。そしてようやく貯めた2,000万円を切り崩しながら年金と合わせて、カツカツの老後をなんとか暮らしていける……というのが現実なのだ。
ところが、年金はいくらもらえるのか…?
前述の調査によると、厚生年金の平均受給額は1年で約175万円であったが、現役世代が年金を受給する年齢となったときに、果たして同程度もらえるのであろうか。年金は積立制度であり、毎年払い続けているものであるが、一方で賦課方式でもあり、受給者に支払われている年金の財源は現役世代が支払っているものだ。
この超高齢化社会が、賦課方式である年金制度をいかに危機的状況に陥れるか、厚生労働省の「事業年報概要」から見ていこう。
“人口動態統計によれば、わが国の出生数は、昭和46~49年の第二次ベビーブームには毎年200万人を超えていたが、昭和49年以降、出生数、出生率とも減少傾向を示している。平成29年の出生数は95万人と前年に比べて3万人減少し、合計特殊出生率(15歳から49歳までの女子の年齢別出生率の合計)は1.43(前年比0.01減)となっている。
年齢別人口(総務省統計局:人口推計月報による)をみると、平成30年4月1日現在で65歳以上人口が3,538万人と年々増加しており、総人口の28.0%を占め、4人に1人が65歳以上人口となっている。
将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所、平成29年推計、出生中位(死亡中位)推計)によると、65歳以上人口は、2042年のおおよそ3,935万人をピークに減少を始めるが、65歳以上人口割合は低出生率の影響を受けて2042年以降も上昇を続け、2065年には38.4%の水準に達する。すなわち5人に2人が65歳以上である超高齢社会になると推計されている。”
現役世代が減少するなかで、5人に2人が65歳以上になる時代に、果たして現状と同様の金額が支払われるのか。ましてや「人生100年時代」と言われ、寿命は長くなるばかり、それに伴い「認知症」患者も増え続けている。
働けるうちは「支える側」にまわり、働けなくなった際には「支えられる側」になるというぎりぎりの時代がすでにやってきているのではないか。力尽きるまで働き続けながら、「それでも仕事があるから、まだいいほうだ」と下向きに自分を奮い立たせる日常が普通になってはいけないだろう。