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企業の99%が定年65歳、さらに延長も続々
いま勤めている会社、何歳まで働くことができますか?
そう聞かれた場合、「定年は60歳だけど、なんだかんだ、65歳まで働ける」と多くの人が答えるでしょうか。現在、2013年に改定となった「高年齢者雇用安定法」によって、定年が65歳へ引き上げられる経過処置期間中。2025年4月からは、定年制を採用しているすべての企業は65歳定年制が義務になります。
従業員30人以上の企業に対し行った厚生労働省『令和2年高年齢者の雇用状況』によると、2020年6月1日現在、65歳までの雇用確保措置のある企業は99.9%。また65歳定年企業は、18.4%で、中小企業では19.2%、大企業では11.9%と、中小企業のほうが定年制度の延長が進んでいます。
さらに2021年4月1日に施行された改正「高年齢者雇用安定法」では、「70歳までの定年引上げ」「70歳までの継続雇用制度」などを努力義務とすることが決まりました。同調査によると、「66歳以上働ける制度」のある企業はの割合は33.4%。中小企業では34.0%、大企業では28.2%となっています。さらに「70歳以上働ける制度」のある企業の割合は31.5%で、中小企業では32.1%、大企業では26.1%となっています。人手不足で悩む中小企業を中心に、労働力確保などを理由に、長く働くことのできる環境整備は進んでいます。
また定年制そのものを廃止する企業もあり、その数は全体の2.7%。やはり中小企業のほうがその割合は多く、全体の3.0%。対して大企業は0.6%となっています。
先進国を中心に高齢化は多くの国で問題となり、それに伴い、定年年齢は引き上げの方向に動いています。日本と同じく、欧州で高齢化が問題となっているドイツでは「69歳定年制度」が提言され、フランスでは2023年に向けて67歳へと引き上げられています。
さらにアメリカやイギリスでは定年制度そのものを撤廃。高齢者であっても仕事を生きがいに生きていけるよう改革が進んでいるのです。
年金が頼りの高齢者夫婦、毎月の赤字額は?
努力義務とはいえ、70歳まで働ける社会が目の前に迫っています。仮に70歳で定年を迎えたとしたら、そのあとの人生は男性で平均16.18年、女性で20.49年あります(厚生労働省『令和2年簡易生命表』より)。
また人生100年時代といわれていますが、全国で100歳超えは7万9,523人、日本最高齢に近くなる110歳になると、全国で141人います(総務省『令和2年国勢調査』)。日本人の寿命は伸び続けていますので、100歳まで生きるのも現実的なものだといえるでしょう。
総務省『家計調査家計収支編』(2021年)によると、65歳以上夫婦の無職世帯の実収入は23万6,576円、そのうち公的年金は21万5,603円、税金や社会保険料などを除いた可処分所得は20万5,911円です。それに対し、消費支出は22万4,436円。毎月1万8,528円の赤字が出ています。
【65歳無職夫婦の家計イメージ】
■実収入:236,576円(うち公的年金:21万5,603円、可処分所得:205,911円)
■実支出:255,100円(うち消費支出:224,436円)
・食料 65,789
・住居 16,498
・光熱・水道 19,496
・家具・家事用品 10,434
・被服及び履物 5,041
・保健医療 16,163
・交通・通信 25,232
・教養娯楽 19,239
・その他の消費支出 46,542
■赤字:-18,525円
出所:総務省『家計調査家計収支編』(2021年)より
仮に、65歳定年から100歳まで生きたとしましょう。35年間、420ヵ月なので、赤字は780万円近くになる計算です。35年間、支出が一定ということはありえませんし、この赤字額はあくまで数値上のもの。ただ年金だけで生活をまかなうのは難しく、足りない分は貯蓄を取り崩す……という事実は、多くの高齢者に共通することでしょう。
高齢化が進み、公的年金の受給額は毎年引き下げられているなか、高齢者の生活はますます厳しくなると考えられます。そんな将来の見据えて「自助努力を!」といわれているものの、給与がまったく上がらないなかでは、資産形成も思うように進められない、という悲鳴も聞こえてきます。ただ貧しく生きる……望まぬ長生きが当たり前となる日本が訪れようとしています。