年金夫婦で21万円…貯蓄2000万円でも老後破綻の危機
少子高齢化が進むなか、年金制度への不信感もあり、「将来、いったいいくら年金がもらえるのか?」は、現役世代、共通の不安です。
厚生労働省『令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)の平均年金月額は14万4268円です(関連記事:『年齢別「公的年金」平均受取額』)。
■年齢別老齢年金平均月受給額
60歳 91304円
65歳 144064円
70歳 147292円
75歳 147957円
80歳 160073円
85歳 162964円
90歳 161044円
また総務省『2020年家計調査家計収支編』によると、無職の65歳以上夫婦がもらえる公的年金の平均は21万8980円。消費支出は25万5549円ですから、平均的な生活を送るとなると、不足分となる月4万円ほどを何かしらでまかなう必要があるといえます。
■65歳以上夫婦世帯の1ヵ月の支出入
実収入 25万6660円
うち公的年金給付 21万8980円
消費支出 25万5549円
うち食料 6万5804円
うち住居 1万4518円
うち光熱・水道 1万9845円
うち家具・家事用品 1万258円
うち被覆及び履物 4699円
うち保険医療 1万6057円
うち交通・通信 2万6795円
うち教養娯楽 1万9658円
その他 8万3315円
単純に月4万円、1年で48万円。仮に85歳までと考えたら、20年で960万円。90歳までと考えたら25年で1200万円。人生100年時代に備えたら、35年で1680万円が不足する計算です。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]令和2年』によると、60代の金融資産*の保有額(金融資産を保有していない世帯含む)は、平均で1745万円、中央値で875万円。家計調査の結果などから考えると、平均値程度の蓄えは目指したい、といったところでしょうか。
*本調査における金融資産=定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため、または将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工・農・林・漁業等の事業のために保有している金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備える部分は除く
■金融資産平均保有額
20歳代 平均値292万円/中央値135万円
30歳代 平均値591万円/中央値400万円
40歳代 平均値1012万円/中央値520万円
50歳代 平均値1684万円/中央値800万円
60歳代 平均値1745万円/中央値875万円
70歳代 平均値1786万円/中央値1000万円
「高額な介護費」を軽減する制度もあるが…
貯蓄2000万円あるから、老後は安心だ!
そう言えないのが、老後を考えるときの難しさです。年齢が上がるにつれて、医療費や介護費は増えていきます。それに対応できるかどうか。どんなに貯蓄があろうと不安に思うことでしょう。
ただ現在の日本には「高額介護合算療養費制度」があり、医療保険と介護保険における年間負担額が著しく高額であった場合、申請すれば負担額の一部が払い戻されます。その限度額は所得や年齢などによって変わりますが、すでに仕事を引退し、年金暮らしであれば、下記の「一般」にあたり、限度額は60万円前後となります(図表)。
気を付けたいのが、老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費、在宅介護サービスを受けている場合の福祉用具の購入費などは、高額介護合算療養費制度の対象とはなりません。「支給対象だと思っていたのに……」と後悔しないためにも、対象サービスの線引きを確認しておくことが重要です。



公益財団法人生命保険文化センターによる調査によると、平均介護期間は4年7ヵ月。では、そこからさらにプラス300万円あれば老後資金は足りるのか、といえばそうではありません。同調査では介護期間10年以上という人も14.5%もいました。やはり、老後資金、貯蓄はあればあるほどいい、というのが唯一の答えかもしれません。