厚生年金や国民年金から「天引き」される税・保険料一覧。額面通りは受け取れない!

いずれ年金生活になった場合について、少しだけ考える機会を作ってみませんか。今回はそんな年金から、「天引きされるお金」について解説します。

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そもそも公的年金とは?

日頃、給料から天引きされている「年金保険料」。そんな年金制度の仕組みについて、まずはしっかり理解しておきましょう。

1階部分:国民年金(老齢基礎年金)

日本に住む20~60歳未満の方が加入するのが、国民年金(老齢基礎年金)です。20歳になれば自動的に加入し、保険料の支払が始まります。

ただし学生時代は、学生納付特例制度を利用して猶予された方も多いでしょう。

保険料は一律で、2021年度は1万6610円(月額) です。納付書や口座振替で毎月納めたり、前納として2年分まとめて納めたりできます。

2階部分:厚生年金

会社員や公務員などは、国民年金に上乗せして厚生年金にも加入します。厚生年金の場合、保険料は一律ではありません。毎年報酬に応じた等級で決まり、納めた保険料や加入期間によって、受け取れる年金額が決まるのです。

以上が公的年金の概要ですが、これとは別に、個人的に3階部分の年金を独自で作る方もいます。iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や私的年金などがその代表格ですね。

では、このように保険料を納めてきた結果、今のシニアはどれくらい受給しているのでしょうか。最新のデータで確認してみましょう。

「国民年金」平均でいくら受給しているか

年金の実際の受給額を知りたい場合、厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」が参考になります。

2021年12月に発表されたこちらのデータからは、実際に年金を受給している方の人数や受給額について、詳細に知ることができます。

まずは同調査より、国民年金の平均受給額を抽出してみます。

国民年金の平均月額

〈全体〉平均年金月額:5万6252円

  • 〈男性〉平均年金月額:5万9040円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万4112円

同調査からは、突出して「6万円以上~7万円未満」が多いことがわかっています。

「厚生年金」平均でいくら受給しているか

次に同資料から、厚生年金についても確認しましょう。こちらの金額には、国民年金の金額も含まれます。元サラリーマンや公務員だった方は、以下の金額が老後の月収目安ということになります。

厚生年金の平均月額

〈全体〉平均年金月額:14万4366円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万4742円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万3808円

※国民年金の金額を含む

平均では男女差が約6万円あります。収入によって保険料が決まる性質上、どうしても個人差が出やすいのが厚生年金です。

また同調査では、ボリュームゾーンが「9万円以上~10万円未満」になっていることがわかりました。国民年金をあわせてもこの金額なので、年金収入のみになった場合、やりくりが難しくなる可能性も十分あります。

そんな年金からも「天引きされるお金」とは

私たちが働いて給料を得る場合、額面と手取りは違います。社内独自の天引きもありますが、全ての人に共通しているのは「税金」と「社会保険料」です。

実は年金からも、これらの天引きがあります。

具体的に天引きされるお金について見ていきましょう。

所得税

給料に所得税がかかるように、一定額以上の年金にも所得税がかかります。公的年金は雑所得となり、65歳以上の場合は年金額が158万円を超えると課税される可能性が出てきます。
ただし、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。

市区町村民税(個人住民税)

前年中の所得に対してかかる住民税。こちらも年金生活になれば、年金から天引きされます。

総務省の「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、65歳以上の高齢単身無職世帯では、直接税として6430円が記載されています。

平均のため個人差はありますが、このように税金が年金から天引きされることを知っておきましょう。

介護保険料

65歳以降は介護保険料を単体で支払う必要があります(それまでは健康保険料に含まれる)が、こちらも年金から天引きされます。

介護状態になれば保険料の支払いが終わると勘違いする方もいますが、介護保険料の支払いは一生涯続きます

介護を利用する際に自己負担が軽減される大切な制度なので、保険料の支払いは必須です。それでも少ない年金から天引きされることは、痛い出費に感じる方も多いでしょう。

健康保険料

65歳以降に会社の保険に加入しない場合、国民健康保険に加入することになります。こうした保険料は、年金からの天引きで納めます。また75歳以上になれば今度は後期高齢者医療制度に加入しますが、こちらの保険料も年金からの天引きです。

これらの天引きについては一定の条件もあるため、納付書等の普通徴収になるケースもあります。しかし、それでも支払いの義務はあるため、実質年金天引きと負担は変わらないでしょう。

年金収入だけで不安に感じる場合は対策を

仮に平均の通り、夫が16万円、妻が10万円を受け取るとしましょう。夫は年間192万円なので、課税される可能性が高く、妻は非課税となります。

税金にプラスして、介護保険や健康保険などの社会保険料も天引きされます。

年金の目安額を確認する際には、こうした「天引きされるお金」についても把握した上で、マネープランを立てていきましょう。