厚生年金の平均が14万円はウソ?年金制度の落とし穴と受給額のピンキリ事情

来月、2022年4月から公的年金額が0.4%引き下げになります。

こうしたニュースを目にする度、「自分達が65歳になったとき、年金はいくらもらえるのだろう」と不安に感じる方も多いでしょう。

2021年12月に厚生労働省が発表した「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均額は約14万円となっています。

しかし、これだけを頼りに老後の年金目安額を考えるのはあまりにもリスクが高いです。

今回は年金制度の基本となる仕組みをおさらいしながら、「厚生年金の平均14万円」の読み取り方を説明します。

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そもそも「厚生年金」と「国民年金」とは

厚生年金に加入している方は、同時に「国民年金」にも加入しています。

日本の年金制度は、図のように2階建ての構造をしているのです。

日本に住む20~60歳未満の全ての方が加入するのが国民年金で、同資料では受給者数が3328万1594人となっています。

この上乗せとして加入できるのが、厚生年金。具体的には会社員や公務員など第2号被保険者で、厚生年金の加入条件を満たした事業所に勤めている方です。

令和2年度末での受給者数は1610万133人でした。

厚生年金の保険料は収入によって決まり、納めた保険料や加入期間で年金の額が決定します。

この金額と国民年金を合算した保険料を、給与天引きにて納めています。

年金の基本的な仕組みがわかったところで、次は実際に受給されている厚生年金の受給額を見ていきましょう。

厚生年金の平均受給額は月額14万4366円

同じく厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、実際に厚生年金を受給している方の受給額を見ていきましょう。

厚生年金の平均月額

  • 平均年金月額:14万4366円

平均は14万4366円。これが「厚生年金の平均額は約14万円」と言われる根拠です。

しかし、ここで注意したいポイントが2点あります。

それは「この金額には国民年金の額が含まれていること」と「個人差が激しく受給額はピンキリ」という点。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

厚生年金の金額は「国民年金込み」

先ほど、厚生年金の平均金額は月額14万4366円であることがわかりました。しかしこの金額には国民年金の金額が含まれています。

公的年金制度は2階建ての構造をしていることから、元会社員や元公務員は「国民年金と厚生年金の合計額」が受給できます。

先ほどの資料で記載された数字は、「国民年金と厚生年金の合計額」なのです。ここからさらに国民年金が上乗せされるわけではないことに注意しましょう。

ちなみに、国民年金の平均は5万6252円です。単純に差し引くと、8万8114円。

この8万8114円が、厚生年金単体での平均額ということになります。

厚生年金の金額はピンキリ

ただし、これらの数字はあくまでも平均です。厚生年金の受給額は個人差が激しいため、平均を鵜呑みにすることはできません。

参考までに受給額ごとの人数を見てみましょう。

厚生年金月額階級別の老齢年金受給者数

  • 1万円未満:10万511人
  • 1万円以上~2万円未満:1万8955人
  • 2万円以上~3万円未満:6万6662人
  • 3万円以上~4万円未満:11万9711人
  • 4万円以上~5万円未満:12万5655人
  • 5万円以上~6万円未満:17万627人
  • 6万円以上~7万円未満:40万1175人
  • 7万円以上~8万円未満:69万4015人
  • 8万円以上~9万円未満:93万4792人
  • 9万円以上~10万円未満:112万5260人
  • 10万円以上~11万円未満:111万9158人
  • 11万円以上~12万円未満:101万8423人
  • 12万円以上~13万円未満:92万6094人
  • 13万円以上~14万円未満:89万7027人
  • 14万円以上~15万円未満:91万3347人
  • 15万円以上~16万円未満:94万5950人
  • 16万円以上~17万円未満:99万4107人
  • 17万円以上~18万円未満:102万4472人
  • 18万円以上~19万円未満:99万4193人
  • 19万円以上~20万円未満:91万6505人
  • 20万円以上~21万円未満:78万1979人
  • 21万円以上~22万円未満:60万7141人
  • 22万円以上~23万円未満:42万5171人
  • 23万円以上~24万円未満:28万9599人
  • 24万円以上~25万円未満:19万4014人
  • 25万円以上~26万円未満:12万3614人
  • 26万円以上~27万円未満:7万6292人
  • 27万円以上~28万円未満:4万5063人
  • 28万円以上~29万円未満:2万2949人
  • 29万円以上~30万円未満:1万951人
  • 30万円以上~:1万6721人
こうして眺めると、ボリュームゾーンが「9~10万円未満」に集中していることがわかります。

男女の差にも注目してみましょう。

厚生年金「男女差」にも注目

  • 〈男性〉平均年金月額:16万4742円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万3808円

男性は平均が16万4742円で、ボリュームゾーンが「17~18万円未満」。女性は平均が10万3808円で、ボリュームゾーンが「9~10万円未満」です。

厚生年金は報酬比例で保険料が決まり、納めた保険料や加入期間で受給額が決定します。

これらの要因から、個人差が激しいのが特徴なのです。

平均を把握するのも大事ですが、これを鵜呑みにしたマネープランは危険であることがわかりますね。

まとめにかえて

厚生年金の平均が14万円と言われる根拠について見ていきました。

「この14万円に加えて国民年金が受給できる」と誤解しないよう、年金制度について正しく理解することが必要です。

また個人差が激しいのも厚生年金の特徴です。

「ねんきんネット」などを参考にして、自分の目安額をしっかり把握しましょう。

今回の資料が、マネープランを考えるきっかけとなりましたら幸いです。