“いざなぎ超えの好景気”なのに、なぜ日本のサラリーマンの年収はいつまでも低いままなのか?

先日、「第2次安倍政権発足とほぼ同時に始まった景気拡大局面が、戦後2番目の長さとなった」と認定した、内閣府の景気動向指数研究会。しかし、「とてもそうとは思えない」という声が多数聞かれます。一体なぜ私たちはこの好景気を実感することができないのでしょうか。元国税調査官で作家の大村大次郎さんが自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、その理由をわかりやすく解説してくださっています。

我々はなぜ“いざなぎ超えの好景気”を実感できないのか?

先日、内閣府の景気動向指数研究会が開かれ、2012年12月に始まった今回の景気拡大局面が、少なくとも2017年9月まで、4年10カ月間続いたことが確認されたそうです。これは1965年から4年9カ月続いた「いざなぎ景気を抜いて戦後2番目の長さとのことです。つまりは、日本は高度成長期に匹敵するような好景気の時期にあるということだそうです。

しかし、この好景気を実感している人はどのくらいいるでしょうか?ほとんどの人は、好景気を実感していないのではないでしょうか?

また戦後二番目ということは、一番目があるわけですが、この一番長い好景気の時期って、みなさんご存知ですか?これは、実は、2002年から6年1カ月間続いたいざなみ景気」です。この「いざなみ景気」にも、今回の戦後二番目の景気にも、違和感を抱きませんでしたか?その違和感は、実はあなただけのものではありません。あなただけが、景気の良さを実感していないのではなく、国民のほとんどは実感していないのです。

なぜならば、バブル崩壊から現在まで、サラリーマンの平均収入は20%も下がっているからです。収入が下がっているのに、景気がいいと言われたって、実感がないのは当たり前です。そして、日本で勤労している人のほとんどがサラリーマンですので、国民のほとんどは好景気を実感できていないわけです。

また好景気の長期化のニュースとともに、個人金融資産のニュースにも違和感を持った方が多いのではないでしょうか?日本銀行の統計によると、2017年9月末の時点において、個人金融資産は1,800兆円を超えたそうです。

日本の個人金融資産というのは、バブル期以降激増しているのです。バブル期の1990年の段階では、個人金融資産は1,017兆円でした。が、現在は1,800兆円以上に達しているのです。二十数年の間に、80%も増加しているのです。

個人金融資産が1,800兆円ということは、生まれたばかりの赤ん坊から100歳以上の老人まですべての人が、金融資産を平均で1,400万円以上も持っていることになります。3人家族であれば4,000万円以上、4人家族であれば6,000万円近くの金融資産を持っているということです。しかもこれは不動産などの資産は含まずに、金融資産のみの額です。

でも、ほとんどの人はこう思っているはずです。「うちにはそんなお金はない」と。現在、ほとんどの日本人は、金持ちの生活というより、貧しめの生活をしています。今の日本では平均的な収入のある人でも子供二人を育てるのは大変です。平均以上の収入があるのに、子供を二人育てられない国というのは、実は世界でもあまりないのです。だから子供のいる世帯のほとんどは、金融資産は微々たるものでしょう。また独身の方も、1,000万円以上の金融資産を持っている人は稀です。では、一体、どこの誰が金融資産を激増させているのでしょうか?今回は、それを分析したいと思います。

激増する億万長者

実は、昨今、日本では億万長者が激増しています。世界的な金融グループであるクレディ・スイスが発表した「2016年グローバル・ウェルス・レポート」によると、100万ドル以上の資産をもっている人々、つまりミリオネアと呼ばれる日本人は282万6,000人でした。前の年よりも74万人近く増加しているそうです。増加率は世界一だったのです。

この激増している億万長者の大半は、実は「大企業の株を大量に持っている人」です。これは、「昨今、株を始めた人」や「株の売買をしている人」ではありません。「かなり以前から、大企業の株をたくさん持っていた人」なのです。次の数字を見てください。これは上場企業の配当金の総額です。

2005年:4.6兆円
2007年:7.2兆円
2009年:5.5兆円
2012年:7.0兆円
2015年:10.4兆円
2017年:12.8兆円

日本の上場企業の配当金は、2009年からのわずか9年間で2倍以上になっているのです。リーマン・ショック前の最高値だった2007年と比べても2倍近くに増えています。つまり、10年前と比べて、配当収入は2倍に増えているということです。これは何を意味するのか、というと配当収入が2倍になっているということです。創業者親族などの大口の株主や、配当だけで生活できるほど株を持っている人は、かなり潤っているはずです。またアベノミクスの影響で、2012年から2018年の間に、日経平均株価は2倍以上になりました。2012年に持っていた株資産は2018年現在では倍に膨れ上がっているということです。

だから、5,000万円程度の株を持っていていた人は、株価が2倍に膨れ上がることで、保有資産が1億円をこえることになります。近年、資産が激増した人でもっとも多いパターンはこのパターンだと見られるのです。

この中には、最近、株を始めたような人はほとんど含まれていないと思われます。というのも、株が上がり始めてから株を買っても、資産はそうは大きくなりません。だから、激増しているミリオネアのほとんどは、昔から株をたくさん数千万円単位で持っている人なのです。

では、もとから数千万円単位で上場企業の株を持っていた人というのは、どういう人でしょうか?これは普通に考えて、「元からある程度のお金持ちだった人」ということになります。つまりは、「元からある程度のお金持ちだった人」が、アベノミクスによる株価の上昇でさらにお金持ちになったということです。それが、昨今、激増しているミリオネアの正体なのです。

日本は実は世界一の金持ち国

日本というのは、実は世界一の金持ち国なのです。先にも述べましたように、日本の個人金融資産残高は現在1,800兆円です。一人当たりの金融資産1,000万円を大きく超え、アメリカに次いで世界第2位です。しかも、これは金融資産だけの話であり、これに土地建物などの資産を加えれば、その額は莫大なものです。また日本は、対外準備高も全ヨーロッパの2倍もあり、国民一人当たりにすると断トツの1位です。対外純資産は約3兆ドルで世界一です。日本は世界一の債権者の国でもあるのです。つまり「日本人は世界一の金持ち」といっていいのです。

なぜ国民の多くは、世界一の金持ち国としての実感がないのでしょうか?その答えは、実は明白です。先ほど述べましたように、日本のサラリーマンの給料が下がっているからです。日本人の平均給与は、この20年間で20ポイントも下がっています。この20年のうちには、戦後一番目と二番目の長さの好景気があったのです。にもかかわらず、サラリーマンの給料は上がるどころか下がっていたのです。安倍首相の財界への呼びかけで、この数年は若干、給料が上がっていますが、この20年で下がった分に比べれば焼け石に水なのです。

そして先進国の中で、この20年間で、給与が下がっているのは、先進国ではほぼ日本だけなのです。この20年のうち、先進国はどこの国でもリーマン・ショックを経験し、同じように不景気を経てきました。でも、OECDの統計によると、先進国はどこの国も、給料は上がっているのです。EUやアメリカでは、20年前に比べて平均収入が30ポイント以上も上がっています。日本だけが20ポイントも給料が下がっているのです。つまり欧米と比べれば、50ポイントも給料の増加率が低いのです。

逆に言えば、日本のサラリーマンは、すぐにでも金持ちになれるということでもあります。今より、給料が50ポイント上がれば、ほとんどのサラリーマンはかなり豊かな、金持ちの気分を味わえるはずです。

しかもそれは決して無理なことではないのです。日本の企業が、他の先進国並みの給料水準にすれば、すぐに達成できることです。そして、日本の企業は、そういう資金的な体力は十二分に持っているのです。企業は内部留保金(貯金)を天文学的に増やし続けています。2017年末の時点で、内部留保金は446兆円にも達しています。この14~15年で倍以上に膨れ上がっているのです。

446兆円という金がどの程度の金額か、一般の人には想像ができないでしょう。国の税収の8~9年分にも及ぶのです。

これを見れば、「日本企業はバブル崩壊以降、かなり儲かっており、長い好景気の時期があった」「にもかかわらず、サラリーマンの給料が上がらなかった」「だから、国民のほとんどは好景気を実感していない」ということなのです。この図式は、誰も否定できないはずです。もし否定できるものなら、ちゃんとデータをあげて否定してほしいものです。そして、この図式を見たとき、日本経済がやらなければならないことは明白です。「企業が社員の給料を上げる」ということです。政府には、他の余計な経済対策など一切しなくていいから、この点のみを集中してやって欲しいものです。