「人生100年時代」の足音が近づくなか、雇用や年金などの面では、働くシニア世代を後押しする制度が整いつつあります。
「厚生労働白書(2020年度版)」によると、2040年の日本では65歳男性の約4割が90歳まで、65歳女性の2割が100歳まで生きるとの予測も…。
「70代は老後の入り口」…そんな認識が一般的になる日は、そう遠くはないかもしれません。
「元気で長生きできたら嬉しいけれど、わが家の老後資金は大丈夫?」
そんな漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
今回は、70代の「年金と貯蓄」にフォーカスし、老後に必要となるお金についても考えていきます。
いまどき70代「みんなの年金」平均は?
さいしょに、70代のみなさんの「公的年金収入」の平均がどのくらいかを見ていきます。
厚生労働省の「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(2019年度)」から、70代の平均年金受給額を抜粋します。
厚生年金保険(第1号)の平均年金月額
( )内は受給権者数
70~74歳:14万6421円(389万2271人)
75~79歳:15万1963円(303万1605人)(※)厚生年金保険(第1号)の平均年金月額には基礎年金月額が含まれます。
国民年金の平均年金月額
( )内は受給権者数
70~74歳:5万6697円(837万559人)
75~79歳:5万5922円(676万8205人)
70代の平均年金月額は、厚生年金であれば14万~15万円ほど、国民年金であれば5万円台です。
たとえば、会社員の夫と専業主婦の妻の70代前半世帯であれば、月額の年金額は約20万3000円になります。
ちなみに、総務省の「家計調査報告(家計収支編)―2020年(令和2年)平均―(二人以上の世帯)」によると、70~74歳の消費支出は24万6656円。
この世帯の収入が公的年金のみだった場合、家計は毎月約4万3000円の赤字になります。
老後資金ってどのくらい必要?
先述の「毎月4万3000円」の赤字分を、貯蓄の取り崩しで補うことを想定し、必要となる額を単純計算すると…
1年間で4万3000円×12カ月=51万6000円
20年間で1032万円
となります。
この計算で、仮に「60歳で退職した無職の夫婦が100歳まで生きる」ことを想定した場合、必要な老後資金は約2000万円です。
では、70代世帯はどのくらいの老後資金を準備できているのでしょうか。次で詳しく見ていきます。
現在の70代の貯蓄額はどのくらい?
70代世帯の平均的な年金受給額を確認したところで、次はその貯蓄額のすがたを眺めていきます。
金融広報中央委員会が2021年2月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和2年(2020)調査結果」から抜粋します。
参考までに、同調査中の「全ての世代(20代から70代以上)・二人以上世帯」の金融資産保有額は平均1436万円(中央値650万円)、借入金残高は671万円(中央値0万円)です。
※金融資産保有額は20代~70代以上のすべての世代。金融資産非保有世帯を含む。
※借入金残高は「借入金有無回答世帯」のみ
これを「70歳以上」に絞ると、金融資産保有額は平均1786万円(中央値1000万円)です。
では、70代以上世帯は、この金融資産をどのように保有・管理しているのでしょうか。
70代の「貯蓄の中身」を知りたい!
70歳以上・二人以上世帯の金融資産保有額は、平均1786万円(中央値1000万円)であることが分かりました。では、この資産を、70代以上二人以上世帯はどのような方法で保有し、管理しているのでしょうか。
引き続き金融広報中央委員会の資料より、その内訳を見ていきましょう。参考までに、60歳代の金額を併記します。
70歳以上・二人以上世帯の金融資産保有額
含:金融資産非保有世帯/ 【 】内は60歳代の金額
預貯金(うち運用または将来の備え):921万【959万円】
- うち定期性預貯金:723万円【585万円】
金銭信託:4万円【5万円】
生命保険:333万円【286万円】
損害保険:49万円【39万円】
個人年金保険:65万円【134万円】
債権:35万円【45万円】
株式:226万円【144万円】
投資信託:129万円【96万円】
財形貯蓄:14万円【27万円】
その他金融商品:9万円【11万円】合計:1786万円【1745万円】
このデータを見る限り、70歳以上の金融資産保有額は、ひとつ若い世代である60歳代とさほど差はないようです。
上記の金額だけで単純に比較することはできませんが、70代以上世帯の中には、蓄えを大きく切り崩すことなく、年金収入などで日常の生活費をまかなえているケースが多いだろう点は推測できそうです。
冒頭で紹介した「令和2年版厚生労働白書」によると、2018年時点で、収入を公的年金や恩給だけに頼る高齢者世帯の割合は5割を切っています。
つまり、公的年金以外に、働いて得た収入や、家賃所得や配当などの財産収入がある世帯が過半数を超えているということです。
さいごに
70代の年金・貯蓄のすがたをながめ、老後のお金について考えてきました。
老後の早い段階で貯蓄の取り崩しが始まり、70代を目前にして「老後破産まっしぐら」といった状況は避けたいものです。リタイヤ後を見据えた資金形成は、できるだけ若い段階でスタートされることをお勧めします。
資産運用は、運用期間が長ければ長いほどリスクが軽減し、リターンが安定する傾向があります。利子が利子を生む「複利の力」で、資産を雪だるま式に育てていくことに繋がるのです。
私たち現役世代のセカンドライフは、思いのほかに長くなる可能性が。70代以降も資産を「運用しながら切り崩していく」という発想を持つ人は、今後増えていくかもしれませんね。
一生涯続くお金との付き合い。「一度見直してみようかな…」なんて思った時は、資産運用のプロフェッショナルの力を借りるのも手でしょう。
ご自身とご家族のライフスタイルに合う、オーダーメイドのお金の増やし方・守り方を見つける第一歩となるかもしれません。